「まわりの子はもうできているのに…」
「同じ年の子と比べて、なんだか進み方がゆっくり」
「大丈夫かな?このままでいいのかな?」
そう感じたとき、親御さんの胸には言葉にならない不安や、焦り、そして自分を責める気持ちが入り混じっていることかと思います。
でも、そんなゆっくりの中にこそ、ちゃんと「その子らしい成長のサイン」があると、私は考えています。
発達がゆっくりな子は、まわりの刺激を「すぐに」吸収するのが得意ではないことがあります。
でもその分、ひとつひとつをじっくり、深く感じ取っていることもあります。
・言葉は少なくても、表情が豊か
・動きはおそくても、リズムに反応している
・言いたいけど言えない想いが、声やしぐさにあらわれる
こうした反応の“土台”は、実はとても大切な力です。
そして、それを見つけて育てていく方法のひとつが「音楽」なのです。
たとえば、楽器を使わなくても――
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好きな音楽が流れると、じっと耳をすます
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リズムに合わせて、体をゆらゆら
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お気に入りのフレーズで、ふっと声がもれる
これは、ただの「遊び」ではありません。
感じたことを表現する第一歩だと私は考えています。
言葉や運動の前に、「感じて、まねて、楽しむ」このプロセスを大事にできるのが、音楽のいいところです。
私たち音楽療法士が出会うお子さんの中には、言葉ではなかなか伝えられない子がたくさんいます。
でも、音楽になると――
・顔が変わる
・声が出る
・視線が合う
そんな“変化”が、音を通してふいにあらわれることがあります。
「これって、もしかして…?」
そう思ったその瞬間こそ、その子の内側で何かが動き始めたサインなのかもしれません。
発達がゆっくりなお子さんにとって、「できるようになる」ことは大切ですが、それ以上に「誰かと心を通わせる体験」がとても大事です。
音楽は、その“つながり”の橋渡しになります。
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正解も、不正解もない
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がんばらなくていい
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楽しければ、それでいい
そんな安心できる空間の中で、少しずつ、“その子なりのペース”で前に進んでいけるのです。
ゆっくりでも、その子らしいリズムで育っていく
「うちの子、発達がゆっくりかも…」
そう思ったときは、まず「今、どんなことに反応しているかな?」という視点で目を向けてみてください。
言葉より先に、手より先に、“音”が心と体を動かすきっかけになることがあります。
音楽療法という名前を知らなくても大丈夫。
音楽療法を通じて、その子らしいリズムが、その子らしい成長が、見つかるかもしれません。
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