(※2020年7月21日更新)
みなさん、こんにちは。
音楽療法士&リトミック講師の柳川円です。
最近、音楽療法という言葉が新聞やメディアなどに取り上げられるようになり、認知度が高まりつつありますが、改めて「音楽療法って何??」と質問をされると、すぐに答えるのが難しいと思っていませんか??
そこで今回は、フリーの音楽療法士である私が、5分でわかるように音楽療法とは一体何なのかについてまとめてみました。
音楽療法とは何か??
まず、音楽療法というのは一体何なのかについて説明をしていきましょう。
日本音楽療法学会では、音楽療法を
音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、 心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること
と定義しています。
音楽をただ聴くということも音楽療法ではありますが、それだけではなく、音楽のもつ様々な働きを生かして音楽を意図的に、そして計画的に使用していくのが大きな特徴と言えるでしょう。
また、ここでは詳しい詳細は割愛しますが、今回は日本の音楽療法の定義をご紹介しましたが、音楽療法がおこなわれている海外では、国によって定義が若干異なってきます。
興味のある方は、ぜひ一度調べてみて下さい。
音楽療法とレクリエーションの違い
音楽療法と聞くと、多くの方は高齢者施設などでの集団レクリエーション活動をイメージされるかと思いますが、では音楽療法とレクリエーションはどのような違いがあるのでしょうか。
音楽療法とレクリエーションの大きな違いは、先ほど紹介した定義にもあるように、音楽療法は音楽の特性を生かして一人一人のニーズをかなえる目的を持った音楽活動という点が異なります。
レクリエーションでは、参加者の方が楽しめるように、交流できるようにという目的で行われる場合がほとんどですが、音楽療法では一人一人が抱える障害や病気を持っているそれぞれのニーズを、音楽活動を通してかなえていくセラピーと言えます。
【音楽療法とは??】音楽の効果
音楽療法はレクリエーションとは異なり、一人一人が抱える障害や病気を持っているそれぞれのニーズを、音楽活動を通してかなえていくセラピーとお伝えしましたが、そもそも音楽には一体どのような効果があるのでしょうか。
音楽には様々な効果がありますが、今回はその中からいくつか重要となるものをピックアップしてご紹介します。
【音楽療法】音楽の効果①感情表現
皆さんはこれまでの人生の中で、楽しさや嬉しさ、喜びや幸せ、怒りや寂しさなど様々な感情を感じたことかと思いますが、これらのような言葉にできない感情も表現することができるのが、音楽の力です。
そう、この言葉では表現できない、非言語による感情表現を可能にするのが音楽の効果と言えるのです。
【音楽療法】音楽の効果②美的体験
このブログを読んでいる方の中に、コンサートやテレビに映し出された演奏を聴いて、「素晴らしい演奏!!」「なんて綺麗なピアノの音色なんだろう」と感動した経験はありませんか??
このような体験を、美的体験と言います。
あなたが美的と感じる音楽を聴いているときには、脳の大脳辺縁系という情緒の表出に関与する部分が反応するといわれています。
また、脳のそれ以外も活性化され、快感や快楽を感じたときに出るエンドルフィンという脳内伝達物質が出され、このような心理的反応を生み出すと言われています。
【音楽療法】音楽の効果③コミュニケーション
5時のドヴォルザークの「家路」を聴くと、「あ、もう5時だ!!」と慌てて家に帰ったり、学校のチャイムを聴くと「授業が始まる~!!」と教室にダッシュした経験、あなたにもありませんか??
このような、特定の音楽を聴いて意味を持たせることから、音楽にはコミュニケーション(伝達)の力があるということが言えます。
音楽療法活動でも、この音楽のコミュニケーション力を生かして「はじまりのうた」や「おわりのうた」を用意することで、音楽を聴くだけで今から音楽療法が始まるという意識づけをする場合があります。
また、最近「モーツァルトを聴くと胎教にいい」などという話もありますが、正直100人モーツァルトを聴かせて「心地いいな」と思う人もいれば、「この曲好きじゃない」「不快」と思う人もいます。(この私もモーツァルトには非常に抵抗があります)
先ほども挙げましたが、音楽には特定の意味を持たせる力はあるのですが、音楽の感じ方は人それぞれで違う為、言葉ほどのコミュニケーション機能はありません。
しかし、この言語ほど明確じゃないコミュニケーションというのが、言語コミュニケーションが難しい人ともコミュニケーションが取れるなど、反対に音楽の良さでもあり、強みとと言えます。
【音楽療法】音楽の効果④身体反応
あなたにも、「この音楽を聴くと思わず体が動いてしまう」という音楽はありませんか??
なぜ人は音楽を聴くと体が動かしたくなるのかというと、聴覚に入ってきた情報は運動神経などに繋がっているためにおきると言われています。
音楽療法活動では、このような身体反応を生かして、対象者の体を動かすことを促したりしていきます。
音楽療法の種類
では、音楽療法にはいったいどのような種類があるのでしょうか。
音楽療法は大きく分けて2種類あります。
その二種類とは、
- 能動的音楽療法
- 受動的音楽療法
です。
【音楽療法とは??】受動的音楽療法
受動的音楽療法は、音楽を聴いてリラックスするなどの音楽療法のことをいいます。
CDショップなどに行くと、時折「聴くだけでリラックスできるCD」などがありますが、それらは受動的音楽療法の種類に当てはまると言えます。
【音楽療法とは??】能動的音楽療法
能動的音楽療法は、対象者が楽器を演奏したり、歌唱に参加するなど、対象者自ら参加する音楽療法のことをいいます。
楽器演奏や歌唱活動の他に、作詞や作曲活動を行う音楽療法もあり、これらも能動的音楽療法の部類になります。
日本の音楽療法の多くは、能動的音楽療法の形で取り組まれることが多いです。
音楽療法の領域
音楽療法は様々な人を対象に行うことができるのですが、実際にはどのように領域が分けられているのでしょうか。
大きく分けると、音楽療法は3つに分類することができます。
その3つとは、
- 児童領域
- 成人領域
- 高齢者領域
です。
それでは、それぞれの領域を詳しくみていきましょう。
【音楽療法とは??】児童領域
まず、音楽療法の児童領域について説明をしていきます。
児童領域では、アスペルガー障害やADHDなどの自閉症スペクトラム障害のお子さんや、ダウン症などの障害の児童を対象に行うことが多いです。
児童の音楽療法がおこなわれる場所としては、病院以外にも、最近では放課後等デイサービスや児童発達支援事業所などで音楽療法がおこなわれることが多いようです。
【音楽療法とは??】成人領域
音楽療法の成人領域というのは、主に精神疾患などの患者さんに行う音楽療法のことをいいます。
日本では、まだまだ理解が進んでいないと感じる精神疾患ですが、精神疾患患者にも音楽療法は非常に有効と言えます。
主に、うつ病や統合失調症、気分障害などの方を対象に行います。
【音楽療法とは??】高齢者領域
日本で今一番求められている領域と言っても過言ではないのが、この高齢者領域ではないでしょうか。
そんな高齢者領域では、主にQOLの向上や認知症予防などを目的に行われる場合が多いです。
また、認知症を退行せずに緩やかにするという目的でも、音楽療法を実施される場合があります。
【高齢者の音楽療法】回想法
高齢者の音楽療法で必ずと言って出てくる言葉に、回想法という言葉があります。
音楽療法で言う回想法というのは、音楽から昔の出来事や経験などを思い出すことという意味です。
あなたも青春時代に聴いていた音楽を聴くと、当時の甘酸っぱい思い出が浮かび上がるかと思いますが、まさにそれが音楽による回想法なのです。
なぜ、高齢者の音楽療法で回想法という言葉がよく取り上げられるのかと言いますと、この昔を思い出すことで、認知症の方は話が多くなったり、活力が湧いてくるからです。
認知症が進んでいくと、段々と口数が少なくなる場合があります。
そんな中でも、音楽を通して何か気持ちが活気づいたり、人に伝えたいという思いにさせられることは、とても素敵なことだと私は考えます。
音楽療法とは??まとめ
いかがでしたか??
まだまだ発展途上な音楽療法ですが、これから少子高齢化社会となる日本では、必要とされること間違いないセラピーだと私は考えます。
その時に、ただ音楽療法という名前だけではなく、音楽療法とは一体どのようなものなのかも広まることができるよう、この記事がそんな始まりになれれば嬉しいなと思っております。
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