音楽療法のセッション中、普段は表情が乏しく、身体の動きも少ないお子さんが、音楽が流れ始めた瞬間、ふと身体を揺らしたり、目線がピアノに向いたりすることがあります。
ほんのわずかな変化かもしれません。
けれど、それは“音に反応している”確かなサインです。
その場にいた保護者の方が「こんなふうに動くなんて初めて見ました」と驚かれることもよくあります。
ことばじゃなくても、伝えていることがあります。
発達がゆっくりなお子さんの中には、
「ことば」で気持ちを表すのがむずかしい子もいます。
でも実は、ことば以外のところで、ちゃんと世界とつながろうとしているサインを出しているんです。
そのひとつが、「音楽への反応」です。
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好きな曲が流れると、笑ったり、体を揺らしたりする
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テレビの歌のイントロが流れると、一気に集中する
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手をたたいたり、踊ったり、歌いだしたりする
それは、「ぼくはここにいるよ」「それ、好きだよ」と、子どもが自分らしく伝えているサインかもしれません。
音楽は「その子らしさ」を引き出してくれる
私たち音楽療法士が子どもたちと関わっていると、ことばでは見えづらかった一面が、音楽の中でぽろっと顔を出す瞬間があります。
たとえば…
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普段無表情な子が、歌のリズムで笑った
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注意がそれやすい子が、音楽だけはずっと聴いていられる
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落ち着かない子が、ピアノの音に耳をすませる
そんなふうに、音がきっかけとなって“つながりの糸”が見えてくることがあるんです。
ですが時折、「うちの子、音楽にそんなに興味がなさそうで…」とご相談を受けます。
でも実際には、反応が小さくて気づいていないだけということも少なくありません。
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ほんの少し体を揺らした
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歌のときだけ目がきらっとした
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音が止まると不思議そうな顔をした
それだけでも立派なサイン。
その小さな反応をキャッチしていくことで、「この子はこういうことが好きなんだ」「こういう時に反応しやすいんだ」と、子どもの“感覚の地図”が少しずつ見えてくるようになります。
音楽療法というと難しそうに聞こえるかもしれませんが、始まりはとてもシンプルです。
「この音、好きみたい」「この曲になると体が動く」
そんな気づきが、子どもとつながる第一歩になるんです。
音楽は、無理に“がんばらせなくても”反応が引き出せるもの。
だからこそ、発達がゆっくりなお子さんのサポートとして、やさしく寄り添える力を持っていると、私は考えています。
子どもが音楽に反応する。
それは、何かを伝えようとしている小さな“お手紙”のようなものだと私はいつも感じます。
表情やことばでは見えにくい子どもたちの心の声が、音を通して浮かび上がる瞬間。
そのサインに、親御さんが気づいてあげられたとき、お子さんとの関係が、ぐっと深まることがあります。
音楽は、その“気づき”のきっかけになります。
気になる方は、ぜひ音楽療法を体験していただき、セッション中のお子様の小さな反応を探してみてください。
きっと、そこにしかない“その子らしさ”が見えてくるはずです。
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