高齢者の介護レクや音楽療法で唱歌を選曲するのは失礼なのか?

最近、ありがたいことに音楽療法のセッション以外にも、執筆依頼が増えている柳川です。

執筆をする際は、私が書きたいことを自由に書いているのではなく、もちろん相手様のご意向に沿った内容を書くので、しっかりと事前にミーティングしたり、何度も何度もメールなどでやりとりをして完成させていきます。

そんな中、相手様からの質問で「高齢者の方に対して、唱歌を選曲するのは失礼なのでしょうか?」という内容をよく受けます。

よく受けるということは、多くの方は「失礼と思っている」のかもしれません。

では、音楽療法士としてはどう思うのか。

どう考えているのか。

あくまでも柳川一個人の意見ではありますが、今回はそんな質問に答えてみます。

 

【高齢者と唱歌】そもそも音楽療法士はどう選曲しているのか

まず、この話に関して回答をする前に、そもそも論、音楽療法士はどのように選曲をしているのかについてお話しする必要があると思う。

この答えとしては、本当に一言に尽きるところがあります。

それは、目の前の対象者にあった選曲をする。

以上。

…と終わってはみんな消化不良すると思うので、もう少し加筆していこうと思う。

そもそも、音楽療法というのは一体なんなのか。

日本での音楽療法の定義は、このブログでも何度も何度も口すっぱく書いてきたように

音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること

(引用:日本音楽療法学会)

と定義されています。

ちょっと硬い表現でわかりにくいので、もう少し具体例を交えて説明をしましょう。

音楽には様々なチカラや効果があります。

例えば、リハビリでいつもより早く歩行をするという活動をするとします。

音楽がない環境で「もう少し早く歩きましょう」と言われても、なかなか体を自由に動かせないなどの方にとっては難しいものとなります。

しかも、いつもより早くと言われても、いつもがどのくらいのペースなのかなかなかわかりづらい部分もあります。

しかし、そんな方でもその方に合うように音楽のテンポを少しづつアップさせながら歩行練習をすることで、いつもより少し早く歩くという目標・目的達成に近づける場合があります。

そう、音楽療法ではこのように対象者の目標・目的達成のために、音楽のもつ力を意図的・効果的に用いて行う活動のことを言います。

ということは。

目の前の対象者が、まず音楽を通じてどんな目標・目的をもっているのか。

そしてそれを達成するためには、どんな曲が適正なのかを考えて選曲をしているのです。

 

【高齢者と唱歌】高齢者に対して唱歌は失礼なのか

以上のことを踏まえて、上記の質問に対して私が思うこととしては、唱歌を歌ってもらおうと思ったのには、どのような意図があって唱歌を選曲したのか、しっかりと考えて音楽を提供しているかどうかが大切だと考える。

確かに、唱歌に対して「こんな歌を選曲するなんて、子供扱いしやがって‼︎」という方はいるかもしれない。

しかし、あなたが唱歌を選曲したのに対して理由があるのであれば、それをしっかり伝え、選曲に幼稚さを感じている方へ配慮をすることが大切となります。

私が音楽療法活動の中で高齢者を対象に唱歌を選曲する際の理由として、

  • 多くの人が知っている
  • 歌詞を見なくても歌える
  • 曲の長さが比較的短い

などがあります。

高齢者の方の中には認知症の方もおり、集中力などが乏しい方もいます。

そんな方に対して、あまりにも長い歌謡曲を選曲するのは、適切だと思う人はほとんどいないでしょう。

そのような方には、曲の長さが短く、先が見通しやすい唱歌が適切だと言えます。

また、集団で行う音楽療法や介護レクレーションを行い際、「私は音楽が苦手だし、歌に詳しくないけど…」と音楽に対して苦手意識を持っている人に出会うこともあります。

そんな思いを持って参加している方がいる中で、いきなり難しい歌謡曲や演歌が出てきたら、もうこの集まりには参加できないと思うことが普通でしょう。

しかし、高齢者の方の中には「唱歌はいやだ‼︎」「歌謡曲しか歌いたくない」という方も存在するかもしれない。

そんな方に、無理に唱歌を選曲するのは、相手の意思を尊重していないことになります。

要は唱歌が高齢者にとって良い・悪いということではなく、目の前の方が一体どんな歌を欲しているのかなどを見極めて、相手に合わせた選曲することが大切なのではないかと、私は考えています。

 

【高齢者の唱歌】選曲は対象の方がするもの

音楽療法士として選曲する際に間違っていけないのは、選曲というのは対象者である方に合わせてするものということ。

よく、戦争に関する歌は高齢者の方の選曲に適さないなどという意見も耳にするが、実際に高齢者施設などで【♪岩壁の母】や【♪長崎の鐘】などは人気な曲であることも多い。

誰かにとっては、戦争の歌は確かに適さない選曲かもしれない。

しかし、誰かにとってはその歌を歌いたい、思いを乗せたいと思う人もいる。

童謡や唱歌も同様に、「子供っぽいので失礼に値するかもしれない」とこちらが思っていても、対象者の方は歌いたいと思っているかもしれない。

まずは対象である高齢者の方がどんな歌を歌いたいのか、聞きたいのか、それをしっかりこちらが把握することが大切である。

もし、どんな歌を歌いたいのかわからない場合は、対象者に直接聞いてみても良いでしょう。

音楽療法のセッションの場面でも、リクエストを受け付けることもある。

相手から意見を聞くことができる場合は、こちら側がいくつか曲を選曲して、そのリストから選んでもらうのがベストかもしれません。

また、選曲をした側も責任を持ってどんな意図を持ってこのような選曲をしたのか、それをしっかりと相手に伝えられるように意識をして選曲をすることが大切だと思う。

 

結論:高齢者の音楽療法や介護レクの選曲は相手に敬意をもってする

これは高齢者を対象にした話に限ったことではないが、あったり前中の当たり前の話、選曲は歌う人に敬意をもってすることが大切です。

しかし、「歌謡曲を歌いたい」と高齢者の方に言われても、歌謡曲に詳しくないという介護職員さんなどもいると思います。

「唱歌を歌いたいと言われたけど、パッと思い浮かばない」という人もいると思います。

そんな方のために、このブログでは季節にあった唱歌や歌謡曲などを紹介しています。

高齢者の音楽療法ソング12ヶ月はこちら

こちらの選曲リストも必ず人気と言える曲ではない場合もありますが、これまで高齢者の方を対象とした音楽療法を行なってきて、多くの方から好評をいただいた曲をまとめています。

参考になれれば幸いです。

以上、一音楽療法士である柳川個人が思う、高齢者に対して唱歌は失礼かどうかについてでした。