「同い年の子は、もういろいろ話してるのに」
「うちの子、まだ単語しか出てこない」
「名前を呼んでも、反応がないことがある…」
こうした“言葉の遅れ”に、不安を感じている親御さんはとても多いかと思います。
でも、その不安を誰かに相談するのって、すごく勇気がいりますよね。
そんなとき、少し視点を変えてお子様の発する「音」に注目してみると、お子さんの中にある“ことばの芽”が、見えてくることがあります。
私たち音楽療法士が出会うお子さんの中には、ことばではあまり反応がないのに、音楽にはしっかり反応する場合があります。
たとえば…
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呼びかけには反応がないのに、歌が流れると顔がパッと変わる
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おしゃべりはしないけど、リズムにあわせて体が動く
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言葉は出ていないけど、メロディーには声を出してついていく
こうした反応はすべて、「ことばにつながる土台」が動いていると私は考えています。
ことばを話すには、実は順番があります。
まずは、音を聞く。
それから、まねしてみる。
そして、意味を持って言葉にしていく。
音楽は、この「まねする力」や「聞く力」を育てるのにとても役立ちます。
たとえば歌。
メロディーがあることで、子どもは言葉よりも先に“音ごと”覚えることができます。
意味はまだわからなくても、リズムや音にのって声を出すことで、
口の動き、耳の働き、そして「伝えようとする気持ち」が育っていきます。
言葉を教えようとすると、「正しく話せるようにしなきゃ」と思ってしまいがちです。
でも、子どもにとって“話す”って、実はとてもむずかしいこと。
だからこそ、音楽のように楽しみながら自然に声が出る環境が、とても大切になります。
音楽の中では、
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間違えてもOK
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声が出なくてもOK
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声が出たら「出たね!」と一緒に喜ぶ
そんな関わりの中で、子どもは「伝えるって楽しい」と感じはじめます。
ある子は、言葉が出るより先に「う〜」「あ〜」と歌のような声を出しました。
別の子は、好きな歌になると体を揺らしながら、リズムにあわせて声をのせていきました。
大人から見ると「まだ話せていない」と思うかもしれません。
でも実はそれも、ことばの“手前”のすごく大事な反応なんです。
音やリズムの中で見せてくれる表情、動き、声。
それは、子どもが世界とつながろうとする「最初のことば」なのかもしれません。
もし、あなたのお子様の言葉遅いのでは?と不安に思いましたら、まずは、お子さんがどんな音に反応しているか、そっと見てみてください。
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好きな曲で体が動く
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歌の中で声が出る
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リズムにあわせて手をたたく
そんな小さな“できた”の中に、
お子さんらしい成長のヒントが、きっと隠れています。
音楽療法というと特別なものに感じるかもしれませんが、
始まりはとてもシンプル。
「音に反応する」
「声が出る」
「楽しそうにする」
それだけでも立派なスタートなんです。
「言葉が出ない」ではなく、「出る前の準備が進んでいる」のかもしれません。
音楽は、その準備を、焦らせずに、でもしっかりと後押ししてくれる存在です。
もし今、「ちょっと心配だな」と感じていたら、
まずは好きな音楽を一緒に聴くことから、はじめてみてください。
子どもは、ちゃんと“音”で返してくれるかもしれません。
それが、ことばへの第一歩になることもあります。
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