みなさん、こんにちは。
音楽療法士&リトミック講師の柳川円です。
最近、テレビや雑誌、新聞などのメディアに取り上げられるようになり、以前より知名度や認知度が上がりつつある音楽療法ですが、よく、音楽療法士という資格を持っているというと、「癒しの音楽を演奏したりするの??」という質問をいただくことがあります。
確かに、一見「音楽療法」と聞くと癒しの音楽を提供するの人なのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のところ、癒しの音楽を聴くことが音楽療法というのでしょうか??
今回は、現役音楽療法士である私が、癒しの音楽を聴くことは音楽療法なのかについてまとめてみました。
音楽療法についてもっと詳しく知りたいという方は、ぜひ最後までお読みください。
そもそも音楽療法とは??
癒しの音楽を聴くことが音楽療法なのかどうかについて説明をする前に、まずは音楽療法について説明していきましょう。
音楽療法というのは、日本音楽療法学会によると
音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、 心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること
と定義をしています。
そして音楽療法には、クライアントが歌を歌ったり、楽器活動に参加するなどの受動的音楽療法と、クライアントが音楽を聴いたりする受動的音楽療法の大きく2種類あります。
音楽療法は3つの関係から成り立っている
そんな音楽療法ですが、音楽療法は3つの関係により成り立つことができます。
その答えは、
音楽療法は対象者と音楽療法士、音楽の3者それぞれの関係から成り立っている。
(引用:音楽療法の原理と実践 PP11)
にもあるように、
- 対象者(クライアント)
- 音楽療法士
- 音楽
の3つで成り立っています。
実際にどのような関係図になっているかは、日本音楽療法学会のHPにも掲載されているので、そちらも合わせてご覧になるとよりイメージしやすいでしょう。
関係図を見てより一層ご理解いただけるかと思いますが、音楽療法というのはこの3つのうちのどれか一つでもかけてしまうと、それは音楽療法ではなくなるということとも言えます。
そう、音楽療法には音楽療法士の存在が必要不可欠なものなのです。
癒しの音楽を聴くことは音楽療法と言えるのか
ここまで音楽療法について簡単に説明させていただきましたが、ここからは本日の議題でもある、癒しの音楽を聴くことは音楽療法と言えるのかについてお話ししていきましょう。
結論から申し上げると、個人で癒しの音楽を聴いてリラックスするというこの行為自体を音楽療法とは言えないでしょう。
なぜなら、先ほど紹介した音楽療法の成り立ちに必要な3者が揃っていないからです。
個人で癒しの音楽を聴いてリラックスするというのは、音楽と個人の関係です。
この関係に音楽療法士の存在はいませんし、必要としてない場合がほとんどです。
このように、個人が癒しの音楽を聴いてリラックする、癒されるというのは、音楽療法ではないということが言えます。
受動的音楽療法は癒しの音楽を聴くこととは違うのか??
ここまで読んだ方の中で、こんな疑問が浮かんだという方はいませんか??
それは、「受動的音楽療法は、クライアントが音楽を聴いたりすることとあったが、これは癒しの音楽を聴くことと違うのか」というもの。
確かに、最初に音楽療法に関する説明をした際に、受動的音楽療法というのはクライアントが音楽を聴いたりすることと書きましたから、この受動的音楽療法と癒しの音楽を聴くことの違いは何か気になるという方はいらっしゃるかと思います。
これに対する回答も、先ほどご紹介した音楽療法の成り立ちに必要な3者の関係で説明することができます。
癒しの音楽を聴くというのは、個人で癒しの音楽を聴いてリラックスするということなので、個人と音楽の関係になり、音楽療法とは言えないということをお話しさせていただきました。
では、受動的音楽療法はどうかというと、例えば受動的音楽療法でリラクゼーションを目的に何か音楽をクライアントに聴いてもらう場合、
- 対象者(クライアント)
- 音楽療法士
- 音楽
の3つの関係が成り立っています。
受動的音楽療法というのは、音楽療法士という専門家がいて、クライアントに聴いてもらうなどの音楽を提供するのですが、この場合は先ほどの個人で癒しの音楽を聴くこととは違い、音楽療法士という存在が必要となります。
ですから同じ「音楽を聴く」でも、個人で音楽を聴く場合と、音楽療法士とクライアントと音楽の3者の関係が成り立った中で音楽を聴くという場合では、音楽療法かどうかが異なってくるのです。
音楽療法であるかどうかは3者の関係の成り立ちをチェックしよう
ここまで読んでいただく中で、音楽療法というものについてご理解いただけたでしょうか??
癒しの音楽を聴くと言っても、それが音楽療法かどうかは先ほど紹介した音楽療法の3者の成り立ちから考えられるといいでしょう。
音楽には聴いてリラックスしたり癒してくれる効果があるものも存在します。
しかし、そういった音楽を個人で聴いて楽しむ=音楽療法とはならないのです。
もし、これから先「これは音楽療法なのかな??」と疑問に思った際は、先ほど紹介した
- 対象者(クライアント)
- 音楽療法士
- 音楽
の3者によって成り立っているかどうかをチェックしてみてくださいね。
音楽療法は癒しを提供するだけではない
私はこれまで音楽療法士として活動していることを周りに話すと、必ずと言っていいほど言われる言葉があります。
それは、最初にも紹介したように「音楽療法って音楽で人を癒すの??」というもの。
確かに、先ほど紹介したような受動的音楽療法を行う場合は、リラクゼーションなどを目的として音楽療法を行うこともありますが、音楽療法=癒しの音楽を提供するだけではありません。
最初に日本音楽療法学会のHPにある、音楽療法の定義について紹介させていただきましたが、音楽療法は様々な目的・目標に沿って行われます。
音楽療法は様々な方を対象に様々な目標・目的で行われる
音楽療法の分野は大きく分けて
- 児童
- 成人(精神)
- 高齢者
の3つの分野で行われています。
例えば、高齢者を対象とした音楽療法を行う場合、認知症の方や慢性疾患などを患っている方などを対象に音楽療法を行います。
このような高齢者の方を対象とした場合の目標・目的の一例として
- 長期記憶への刺激(回想法など)
- 余暇活動
- 運動機能の向上
- コミュニケーション能力の向上
- 痛みの緩和
- 認知症予防
- 心身の発散
など様々なものがあります。
これらは高齢者を例にした場合ですが、高齢者を対象とした音楽療法と言っても、クライアントに合わせた目標・目的というのはここに紹介した以外にも様々なものがあります。
それは、児童でも成人(精神)でも同じです。
そう、音楽療法というのは癒しを目的・目標にする活動だけではなく、クライアント一人ひとりに合わせた様々な目標・目的で音楽活動を行うのです。
詳しくは過去のブログにもまとめていますので、そちらも合わせてご覧ください。
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癒しの音楽を聴くことは音楽療法なのか??音楽療法士が徹底解説まとめ
いかがでしたでしょうか??
音楽療法という言葉は広まりつつあっても、実際に音楽療法を行っている現場も日本ではまだまだ少ないので、「一体どんなことをするんだろう??」と思われる方も多くいらっしゃるかと思います。
今回は、音楽療法士として少しでも多くの人が音楽療法について興味関心を持っていただきたいなと思い、記事を書かせていただきました。
この記事をきっかけに、音楽療法の興味関心を持ってくださる方が増えるよう、今後も更新頑張っていきます‼︎
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